秘夜に愛を刻んだエリート御曹司はママとベビーを手放さない
 彼の言葉に背中を押されたのか、ウタは勇気を出してふかふかした素材の白いタワーに飛びのった。あがったり、さがったり、適度な運動を楽しんでいるようだ。
「気に入ってくれたみたいですね」
 清香が弾んだ声で言うと、志弦は優しい笑みを浮かべた。

「……君はどっちだろう?」
「え?」
 なんの話だろうと聞き返すと、志弦は視線をウタから清香へと移した。その目はどこかいたずらっぽく輝いている。
「ウタと同じく叩いて渡るタイプに見えて、結構大胆なところもあるしな」
 こぶしを顎に当てて、真剣に考え込むそぶりを見せた。
 この話題は以前に茉莉とも盛りあがったことがある。彼女はなんの迷いもなく石橋を駆け抜けるタイプ。
『私は橋が崩れる前に向こう岸に着くから大丈夫! 清香はあれね――』
 茉莉の台詞が蘇ってくる。
「橋の存在に気づかず、ひたすら川沿いを歩き続けるタイプ、って友達に言われました」
 ふてくされた顔でこぼすと、志弦はぷっと噴き出した。アハハと声をあげて笑っている。

「そんなに笑わなくても!」
 頬を膨らませて抗議の意を伝える。だが、彼の笑いは止まらない。
(美術館で見つめているだけのときは大人で物静かな人だと思っていたけど、意外とよく笑うんだな)
 そんなギャップも素敵と思う自分は、かなり重症だ。
「悪い、悪い。でも、君のことをよくわかってる、すばらしい友人だな」
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