秘夜に愛を刻んだエリート御曹司はママとベビーを手放さない
 そうだろうと言わんばかりに、ウタは誇らしげに顎を反らす。そのとき、襖の向こうでカタンと小さな物音がした。
「こんな時間にすまない。まだ起きているか?」
「は、はいっ」

 志弦の声だった。意識してはいけないと思うほどに、頬が赤く染まっていく。さきほど風呂を済ませたばかりでパジャマ姿だが、上に厚手のニットガウンを羽織っていて露出が高いわけではない。このままでも大丈夫だろうと判断して襖を開けた。
「な、なにかありましたか?」
 そう聞いている途中で、答えはわかった。志弦が大きなキャットタワーを抱えていたからだ。
「ウタのために頼んだものが届いていた。よろこんでくれるか気になって」
 駒子も志弦もウタにはメロメロだ。なんだかおかしくて、清香はくすりと口元を緩めて、彼を部屋に招き入れた。

「ウタ。いいものが届いたよ」
 ウタはぴくりと耳を動かす。彼の前にタワーを置いてやると、最初はおそるおそるといった様子で近づき、正体を確かめるように周囲をグルグルするだけだ。
 ふたりは畳に並んで座って、そんなウタを見守った。
 志弦と清香の間には、互いの遠慮のあらわれのような、微妙な距離がある。それでも、彼がいる側の半身が緊張で硬くなる。

「ウタは賢いな。石橋を叩いて渡るタイプか」
 志弦は目を細めてウタを見ている。
「大丈夫だ。これは君のために用意したもので、危険はない」
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