秘夜に愛を刻んだエリート御曹司はママとベビーを手放さない
 着替えを公開するような間柄ではないはずだ。冷静になろうと、意識してゆっくりと話す。
「とりあえず、着替えを終えるまで出ていてくれませんか? お話があるのでしたら、そのあとで聞きますから」
 が、昴は出ていく気はないようだ。それどころかズカズカとこちらに近づいてくる。昴は清香の前にかがみ込み、にやりと笑ってみせた。嫌な笑顔だ。心がざらりとする。
 彼の指が清香の顎を持ちあげる。
「今夜はデートをキャンセルされちゃって傷心なんだよね。慰めてよ、清香ちゃん」

 今夜もひどく酔っているようだ。清香が露骨に顔をしかめたことなど気にも留めず、ぐっと顔を近づけてくる。
「身体の相性さえ問題なければ、すぐにでも籍を入れてあげるよ」
「や、やめてください」
 彼の瞳に劣情の火がともったのを見て、清香は身体をこわばらせた。肩にかけられた昴の手を押し戻そうとするもびくともしない。一瞬の隙をついて、どさりと畳に組み敷かれた。
「俺と結婚したいんでしょ。できないと君の実家は大変なことになるんだよね?」
 たしかにそのとおりだ。ぐっと言葉に詰まる。そんな清香の様子に、昴は満足そうに笑む。

「だったら、おとなしくしておきなよ。楽しませてあげるから」
 昴の手が脇腹を撫でた。
(このまま抱かれてしまえばいい。そして、志弦さんに軽蔑されてしまえば……)
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