秘夜に愛を刻んだエリート御曹司はママとベビーを手放さない
「よ、嫁って……早とちりしすぎだから~」
 口では否定しつつも顔はどうにもにやけてしまう。自分と志弦は誰にも応援されない関係だと思っていたけれど、実際にはこうして味方になってくれる人もいる。それは清香に大きなパワーをくれる。
「いやいや。弟の婚約者候補を奪うんだから、当然そのつもりでしょ。むしろ、この期に及んでその覚悟もないやつに清香は渡せないわよ」
 茉莉はすっかり親目線になっているようだ。

「榛名画廊の従業員さんのことは遠慮なく相談して。うちが力になれることなら協力する」
「ありがとう、茉莉」
 ロンドンに発つ前に榛名家の娘として、できることはしておきたいと考えていた。茉莉のご両親に助力をお願いするのもそのひとつだ。尾野美術館のほうは『ただのはったりです。本気で手出しする気はない』との駒子の証言を得ているので心配ないだろう。
 茉莉はちょっとむくれた顔で清香の頬をつまむ。
「また人のことばっかり心配してるでしょ。自分の幸せを一番に考えていいんだからね!」
「うん」
 そう言われても不安は残る。もともと、自分は心配性なたちなのだ。

「もっと楽しいことも考えようよ。彼と一か月ぶりに会う日のコーデとかさ。ちょうどクリスマスだし赤いワンピとかどう?」
「長時間のフライトだからワンピースはどうかなぁ」
 シワが気になるし、おなかが苦しくなりそうだ。
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