秘夜に愛を刻んだエリート御曹司はママとベビーを手放さない
 あっけなくひと月が過ぎた。駒子たちのはからいもあり、両親は昴との結婚話は順調に進んでいると信じているらしかった。昴がどう考えているかがさっぱり不明なのが懸念ではあるけれど、そのあたりのことは志弦と相談すればいい。そう思った。

(だって、あと数時間もすれば彼に会えるんだもの)
 ついに約束の日、偶然にもクリスマスイブだった。夕方のフライトだから、彼との待ち合わせの時間はお昼過ぎだ。
「落ち着いたら連絡してね」
「うん、本当にありがとう」
「幸せになるんだよ~!」
 茉莉に礼を言って、十時過ぎにはマンションを出た。

 彼女からのアドバイスと快適さのいいとこ取りで、洋服はワインレッドのニットワンピースを選んだ。オフホワイトのダウンを羽織って、足元は脱ぎ履きしやすいショートブーツを合わせる。
 昴のことや画廊のことを思うと、浮かれてばかりもいられないのだが……今は純粋に志弦に会える喜びで胸がいっぱいだった。たったひと月離れていただけで、彼が恋しくてたまらない。自分で思っている以上に彼に溺れている。

 大河内家を出てすぐに、職場には退職の意思を告げていた。もともと、縁談の話を伝えるときに『結婚後も仕事を続けられるかはわからない』と話してあったので、館長も予想はしていたという顔で受け入れてくれた。引継ぎも済ませ、二日前に無事最終出勤を終えていた。
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