秘夜に愛を刻んだエリート御曹司はママとベビーを手放さない
(会えたらすぐに電話番号を聞かないと!)
 彼はもう着いているだろうか、はやる気持ちを抑えきれず自然と早足になる。
 ところが――。

「清香!」
 後ろから腕を引かれ、足止めされる。振り返ると、そこにいたのは志弦ではなく父、琢磨だった。
「お、お父さん!」
 息が止まるかと思った。ここまで来て見つかってしまうなんて……。
(どうして?)
 清香の疑問に答えるように、琢磨に続いて昴が姿を見せた。
(す、昴さん……)
 大河内家を出たこと、とうとう彼に気づかれてしまったのだろうか。
「あぁ、よかった。見つかって! マリッジブルーだからって、勝手に家出するなんてひどいなぁ」
 くつくつと底意地の悪い笑みを浮かべて、清香を見やる。

「そもそも、出ていけと言ったのはあなたのほうで――」
 夜の相手を拒んだら、花嫁失格だと言ったのは彼のほうだ。今さら家出をとがめられる筋合いはない。そう反論しようとしたが、琢磨の手に口を塞がれてしまった。
「いやぁ、本当に申し訳ありません! 反省するよう、存分に言って聞かせますから」
 琢磨は滑稽なほど昴にへりくだっている。そして、清香の頭を押さえつけて謝罪させようとする。
「ほら、清香も。昴さんに謝るんだ。素敵な方との結婚を前にして、ちょっと不安になっただけだよな?」
「ち、ちが――」
 昴は心底楽しがっている様子だ。
(昴さん、知ってる?)
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