秘夜に愛を刻んだエリート御曹司はママとベビーを手放さない
 彼はきっと清香がなにをしようとしているのか知っていて、ここに来たのだ。もちろん邪魔をするために。
 カフェのほうを振り返る。
(そんな、すぐ近くに志弦さんがいるのに!)
 彼の性格なら、清香を心配させないようにと、きっともう到着している。

「お父さん、ごめんなさい! 私、行かないと。お願い、許して……」
 つかまれた腕を懸命に振り切ろうとしても、両脇を琢磨と昴に挟み込まれてしまって逃げられない。
「なんだか興奮状態ですね。少しご実家で休ませてあげてください」
「はい! 落ち着かせて、あらためて謝罪にうかがいますので」
「う~ん。ちょっと面目をつぶされちゃった感があるけど……結婚するかどうかは今後の彼女の態度次第かなぁ」
 志弦がいるはずのカフェがどんどん遠くなっていく。

(志弦さん、志弦さん!)
 そう叫びたいけれど、ショックで声にならない。
(やっぱりこの恋は許されないの?)
 放心状態のまま、清香は空港の外に出された。冷たい風に身体の芯まで凍りつくような心地がした。
 昴のために車のドアを開けようと琢磨が小走りになる。パトロンには健気なことだ。

 その隙に、昴が清香に耳打ちする。
「あんたにはこれっぽっちも興味がないけど、兄貴にはやらないよ。味見以上を許した覚えはないからな」
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