秘夜に愛を刻んだエリート御曹司はママとベビーを手放さない
 おなかに視線を落としてみても、当然まだぺたんこだし、なにかの反応が返ってくるわけでもなく、信じられない気持ちだ。
 けれど、エコーの結果、たしかに新しい命が宿っていることが確認できた。

「白っぽく見えるところが胎芽です。ここ、チカチカしてるでしょう。心拍もしっかりしてますよ」
 医師がモニター画面を指さしながら説明してくれる。
 正直よくわからない部分も多いけれど――。
(これが赤ちゃんの心臓?)
 こんなに小さいのに、力強く、ちゃんと動いている。母性本能というやつだろうか。その健気な拍動にジーンとしてしまった。

 清香は志弦以外の男性を知らない。
(父親は、間違いなく志弦さん。私と彼の赤ちゃん)
 思いがけない妊娠ではあるけれど、その事実には心が温かくなる。遅ればせながら、実感が湧いてきた。
(この子は……私が守るんだ!)
 志弦がいない今、我が子を守れるのは清香だけだ。

 そのためには、両親と戦わなくてはいけなくなる。ふたりは、志弦の子の妊娠を喜んではくれないだろう。
 慎重に、絶対に失敗しないよう、考えるのだ。
(この場で父親が昴さんじゃないことをばらしてしまうのは、多分まずい)
 最悪の選択を迫られかねない。
 奈津の肩を抱かれながら、清香は琢磨の待つ待合室に戻る。
「やっぱり妊娠ですって」
「おぉ、めでたいな! 俺たちもおじいちゃんとおばあちゃんか~」
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