秘夜に愛を刻んだエリート御曹司はママとベビーを手放さない
 つわりがきつくて正月を楽しむ気にもなれないけれど、妊婦向け雑誌で『つわりはおなかの子が元気に育っている証拠でもある』という記事を読んで、ちょっと元気を取り戻したところだ。
 長期間、実家で過ごすのは久しぶりだ。ソファにだらしなく横たわり、窓の外を眺める。今日はどんよりとした曇り空だ。そういえば、ロンドンも曇りの日が多いと聞く。
(志弦さんも今頃、こんな空を見あげているかな?)

 約束の場所に来なかった自分を、彼はどう思っただろうか。なんとかして連絡を取りたいと考えを巡らせたものの、大河内家に清香の味方は駒子と千佳しかいない。彼女たちは昴に追い出され、もう屋敷を去ったそうだし……。志弦の会社に連絡しては、昴の耳に入ってしまう恐れもある。妊娠中の身でロンドンを訪ねるわけにもいかない。

 夜、ふたりが寝静まった頃に清香は新年のあいさつがてら茉莉に電話をかけた。相談にのってくれそうな相手は彼女しかいない。メッセージアプリで状況は伝えてあったので、話は早い。
「もう一度、家出しようと思うんだけど、どうかな?」
『うん。実家を離れるのは賛成。でもさ、その昴さんとの縁談は思いきりぶち壊しちゃったほうがいんじゃない? でないと清香の両親はまた連れ戻そうとするかも』
「そっか、たしかに。なら、昴さんに妊娠を伝えちゃえばいいのかも」
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