秘夜に愛を刻んだエリート御曹司はママとベビーを手放さない
 志弦となんとか連絡を取れないかとあれこれ考えてみたものの、いい案は浮かばなかった。結納をぶち壊した立場上、大河内家や志弦が在籍していた大河内ホールディングスには連絡できない。ならば、ロンドンに直接連絡を……と調べてみたのだが、大河内グループ関連企業のロンドン支社や事務所はたくさんあって、どこに彼がいるのか突き止められなかった。

 最終手段は直接ロンドンに探しに行くこと。そう思っているのだが、よく考えたらこれもかなり無謀な案だ。会社も住所も知らないのに、果たして会えるものだろうか。
(そもそも、約束をすっぽかしちゃったし、勝手に出産まで……再会できたとしても志弦さん、迷惑に思うかも……)

 碧美島に来た当初は、志弦との再会はそう難しくないと思っていたし、子どもの誕生もきっと喜んでもらえると信じていた。でも、離れている時間が長くなればなるほど不安がつのる。

 清香はいつもの場所へと足を向ける。いつか、志弦と一緒に渡ったあの砂の道。現在の住まいであるアパートのすぐ近くなのだ。あの岩島を眺めるのが、ここ暮らしはじめてからの日課になっていた。

 歩いている間も、我が子がググっとおなかを押してくるのがわかる。先月くらいまでは、元気いっぱいに暴れ回っているような感じだったが、もうおなかのなかも窮屈になってきたのだろう。動き方も変わってきた。
「きっともうすぐ会えるんだね」
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