秘夜に愛を刻んだエリート御曹司はママとベビーを手放さない
「はい、私も。志弦さんとキスしたいです」
 優しく唇が重なる。まるで最初からふたつでひとつだったみたいに、どうにも離れがたくて、やめどきがわからない。
「このまま永遠にこうしていたい」
 吐息交じりの彼のささやきに、清香はくすりと笑む。
「私も同じことを思いました」

 それぞれの事情はまだなにも話していないけれど、こうして抱き合えば気持ちはひとつだとわかり合える。
「愛してる、清香」

 清香の借りているアパートにふたりで帰る。学生が住むような、質素な1DKの部屋だ。
「志弦さんは初めて入るような部屋かもしれませんが」
 そう前置きして、志弦を部屋にあげた。

 日当たりもよく、窓から海も見えて、清香自身はとても気に入っている。
 興味深そうに室内を見回してから、彼はニコニコと言う。
「いい部屋だな。清香の匂いがする」
「えぇ? 臭いですか。すぐに換気を」
 慌てて窓に向かおうとする清香の背中を彼はそっと抱きしめる。
「いい匂いだよ。甘くて優しくて……俺の本能をこれでもかとかき立てる」
 熱っぽい声が脳に直接響いて、それだけでのぼせてしまいそうだ。

「んっ、ふぅ」
 甘い吐息が混ざり合う。後頭部と背中を志弦にがっちりとホールドされていて、身じろぎもできない。もうどのくらい、キスを続けているだろう。
 テーブルに置かれたふたり分のルイボスティーは、すっかり氷が溶けてしまっている。
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