秘夜に愛を刻んだエリート御曹司はママとベビーを手放さない
 清香もビールをひと口飲む。しとやかと評される外見に似合わず、アルコールには強いほうだけれど、今日のビールはやけに苦く感じる。
「いつかは大恋愛を……なんて子どもみたいな夢は、もう捨てないとね」
 苦笑交じりに言う。清香は海外のロマンス小説が大好きで、運命的な恋に憧れを抱いていた。もっとも、ただ憧れているだけで、運命どころか、ごく平凡な恋すら経験しないままに二十七歳になってしまったけれど。

「いや、子どもっぽくないでしょ! 運命の恋、私だって憧れるもん」
 彼女の反応はちょっと予想外だった。
「え、そうなの?」
 茉莉は自由奔放で、中一のときから彼氏が途切れたことはない。運命的な恋なんて、たくさん経験しているものと思っていた。そう言うと、茉莉は笑って首を振る。
「う~ん。ほら、私ってモテるじゃない? だから調子に乗っていろんな男と付き合ったけど……正直、これが最後の恋って思ったことはないんだよね。いっつも、こいつとは一年くらいかなーとかって、先が見えちゃって」
「そうだったんだ」

 モテモテの茉莉でも運命の恋にはなかなかたどりつけないなら、ビギナーの清香にはもっと難しいだろう。
(結局、私にはお見合い結婚が合ってるのかも)
 酸っぱい葡萄とわかっていても、こうして自分を慰めて元気づける以外に道はない。
「あ。でも、清香はちゃんとしてるじゃない!」
「なにが?」
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