秘夜に愛を刻んだエリート御曹司はママとベビーを手放さない
事務作業をしていたところにそう声をかけてきたのは、大学院生のアルバイトスタッフだ。教授の斡旋でこの仕事を始めてみたものの、学芸員を目指すつもりはなく就職は一般企業を考えているらしい。
『だって、倍率高くて難関なわりにお給料がいいわけでもないですし。あ、出会いがないのもマイナスポイントですね』
そう言って笑っていた。彼女は有能だし、華のある美人だから、就職は引く手あまただろう。
手渡された資料にざっと目を通して、うなずいた。
「うん、問題ないわ。人数分をファイルに入れてまとめておいてくれる?」
「は~い」
ゆるく巻かれた髪をふわりと揺らして、彼女は清香の顔をのぞき込む。
「どうしたの?」
「ちらっとうわさを聞いたんですけど、榛名さんお見合いするって本当ですか?」
清香は思わず顔をしかめる。それを見た彼女が「あ、本当なんだ」とクスクス笑う。
館長の仕業だろう。美術館がもっとも忙しい日曜日に休みをもらうために、彼には正直に伝えたのだ。彼は生真面目そうな外見に似合わず、おしゃべり好きで口が軽い。
「榛名さんて、まだアラサーですよね?」
清香は二十七歳。〝まだ〟どころか、これからアラサーにさしかかるところだ。
「二十七歳よ」
ちょっと唇をとがらせて、そう答える。
「全然若いじゃないですか~! いいんですか、もう人生決めちゃって」
『だって、倍率高くて難関なわりにお給料がいいわけでもないですし。あ、出会いがないのもマイナスポイントですね』
そう言って笑っていた。彼女は有能だし、華のある美人だから、就職は引く手あまただろう。
手渡された資料にざっと目を通して、うなずいた。
「うん、問題ないわ。人数分をファイルに入れてまとめておいてくれる?」
「は~い」
ゆるく巻かれた髪をふわりと揺らして、彼女は清香の顔をのぞき込む。
「どうしたの?」
「ちらっとうわさを聞いたんですけど、榛名さんお見合いするって本当ですか?」
清香は思わず顔をしかめる。それを見た彼女が「あ、本当なんだ」とクスクス笑う。
館長の仕業だろう。美術館がもっとも忙しい日曜日に休みをもらうために、彼には正直に伝えたのだ。彼は生真面目そうな外見に似合わず、おしゃべり好きで口が軽い。
「榛名さんて、まだアラサーですよね?」
清香は二十七歳。〝まだ〟どころか、これからアラサーにさしかかるところだ。
「二十七歳よ」
ちょっと唇をとがらせて、そう答える。
「全然若いじゃないですか~! いいんですか、もう人生決めちゃって」