秘夜に愛を刻んだエリート御曹司はママとベビーを手放さない
「了解。最高の夜を約束するよ」
 彼はこの景色が一番だと言う。でも、清香にとって今日のこの島でもっとも美しいものは……彼のこの笑顔だ。

 色気たっぷりの声で『ホテル』とささやかれたので、いかにもな場所を想像してしまったが、全然違った。
 彼が連れてきてくれた場所は、ラグジュアリーなリゾートホテル。美術館が併設されているだけでなく、ホテル内部でもアートを楽しめる仕掛けがたくさん施されているそうだ。国内最大手の広告代理店が運営していることは清香も知っていた。

(そういえば、この代理店も大河内グループのひとつなのよね)
 大河内グループは巨大だ。大河内の名を冠してはいないが、実は……という企業も多く存在する。この代理店もそうだった。
「どうかした?」
「いえ、なんでも」
 今は余計なことは頭から追い出してしまいたい。そう言わんばかりに強く頭を振った。
(今夜だけはすべて忘れてしまえ。画廊のことも、お見合いのことも……)
 最高のデートのあとは、もとの優等生な自分に戻ってお見合いをする。そう決めていた。

 うわさに聞いていたとおりの、本当に素敵なホテルだった、開放的なロビーには絵画やオブジェが飾られている。彼はフロントに立ち寄ると、すぐに戻ってくる。おそらく、最初から部屋は予約済みなのだろう。
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