秘夜に愛を刻んだエリート御曹司はママとベビーを手放さない
 彼はトンと小さな音を立ててコーヒーカップをテーブルに置く。立ちあがり、清香の後ろまで歩いてくると、膝を折って清香の肩に腕を回した。
 背中から抱き締められているような状況に、戸惑いを隠せない。
「あ、あの……」
「気にしなくていい。今日のデートは楽しかったから、ちっとも惜しくない」

 彼の腕にぎゅっと力が込められた。うなじに彼の吐息がかかって、肌がぞくりと粟立つ。
「宿泊客しか見られないコレクションや食事も楽しみだったんだが……こうしてふたりきりになったら、君が欲しくてたまらなくなった」
 その言葉の意味を察して、清香は小さくうなずいた。

 シャワーを終えて、彼の待つ寝室に向かう。もとのワンピースを着るべきか、バスローブでいいのか、ものすごく迷ってしまったが、勇気を出して後者を選んだ。すぐにバレてしまうかもしれないが、経験のない面倒な女と思われたくなかったから。
「おかえり」
 寝室の扉を開くと、すぐに彼が振り返った。先にシャワーを済ませた彼もローブ姿で、緩く開いた胸元からのぞく鎖骨が男らしい。

「遅かったな」
「あ、すみません」
「時間がかかった理由を当ててみせようか?」
 彼は楽しげだ。
「俺を焦らすため?」
「そ、そんなことは!」
 急いで否定する清香に彼は白い歯を見せる。
「じゃあ、こっちかな。洋服を着るかバスローブでいいのか迷ってた。どう、正解?」
「うっ」
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