秘夜に愛を刻んだエリート御曹司はママとベビーを手放さない
 なにも始まらないうちに、慣れていないことを見抜かれてしまった。クスクスと笑い声をあげながら、彼は立ちあがり清香に近づく。
 長い指に顎をすくわれる。
「面倒だなんて思わないよ。むしろ、まっさらな君を俺の色に染めるのが楽しみで仕方ない」
 ずっと紳士的だった彼の瞳に、初めて雄の情欲がにじんだ。

 このまま彼の熱に流されてしまいたい気持ちを抑えて、清香は意を決して口を開く。
「面倒な女であることはバレてしまったようなので、ひとつだけ告白してもいいでしょうか?」
 自分はもうすぐ見合いをし、結婚するのだ。
 そう告げるつもりだった。デートといっても、彼は別に清香に愛情があるわけではないだろうし、自意識過剰と思われるだけだろうが……秘密にしたまま不実な行為の片棒を担がせるのは卑怯じゃないかと考えたのだ。
「ダメだ」
「え?」

 迷ったすえの提案はあっさりと却下されてしまった。彼はいたずらっぽくほほ笑む。
「聞いてしまって、君を抱けなくなるのは嫌だ。その告白は明日の朝に聞くことにする」
「で、でも……先に聞いておけばよかったと思うかもしれませんよ?」
「後悔も翌朝にたっぷりするからいい。この議論はこれで終わりだ、いいな?」
 条件反射のように、清香はうなずいてしまった。いや、本当はほっとしていたのかもしれない。
(私も……告白した結果、やっぱり抱いてもらえないなんて……そんなの嫌だから)
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