恋なんて、正気の沙汰じゃない!
ブーーーッッ
机の上に置かれた携帯が鳴った。
(佐竹君)〈今日、一緒に帰れる?〉
佐竹君からのメール。
佐竹 裕翔。
1年は同じクラスで、隣の席で、仲良くなるのに時間はかからなかった。
イケメンで優しい上に、人懐っこい性格だから、モテないはずがない。
そんな佐竹君から告白されたのが、1週間前。
2年になって別々のクラスになったけど、仲良いのは変わらなかった。
かと言って、好きかと聞かれたら……
正直、分からない。
尾崎 雛。
クラスの中で目立つ存在でもなければ、モテモテというわけでもない。
地味ではないと思うけど、派手でもない。
可もなく不可もなく……そんな感じの私に、何故?と思ったのが最初の印象。
だけど、佐竹君の気持ちは嬉しかった。
真っ直ぐ伝えられた言葉に。
「雛が好きだ。
雛は、誰も好きじゃないって分かってるけど、少しずつでいいから、誰より近くにいさせてくれない?」
優しい声で、優しい眼差しで、どこまでも真っ直ぐ……
半ば押し切られるように付き合いだして1週間。
流されやすい性格なのもあるけど、普通に憧れてたのもある。
普通に人を好きになって、恋バナしたり、デートしたり…
そんな普通な事に。
(雛)〈今日は、ごめんね。〉
だけど、私にはまだできないらしい。