恋なんて、正気の沙汰じゃない!


ガタンッ


誰もいなくなった教室に、椅子に座った音が響く。


だけど、すぐに…


ミーーンミーーンミーーン


開けた窓から蝉の鳴き声でかき消された。


暑い……


煩い……


目を閉じて、机にうつ伏せると、廊下から足音と声が聞こえてきた。


「涼ちゃん、夏休みにデートしよー。」

「私もー。 花火大会とか連れてってよ。」

「プールとかでもいいよ。すっごいの着るから。」


複数の女の子の楽しそうな黄色い声。


誰かは分からないけど、相手は誰か分かった。


「やだ。面倒くさい。」


ほら、この声。


ガラッ


「忙しいから、帰りな。」


教室のドアが開くと、確信に変わる。


「えー、涼ちゃんのケチー。」

「諦めないからね。」

「また明日も誘いに来るからー。」


女の子達の足音が遠ざかっていく。


それから、大きな溜め息が聞こえてきて、顔を上げた。


「先生、モテますねー。」


茶化すように言うと、 心底嫌な顔をされる。


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