恋なんて、正気の沙汰じゃない!


「あはは、先生すごい。」


笑って誤魔化すように、前髪に触れた。


私の癖…
気持ちを隠したい時に、前髪に触れる。


「ただ、まだ帰りたくないだけだから…」


窓の外を見ると、夏らしい入道雲ができていた。


暑い……


開け放しの窓からは、風があまり入ってこない。


入ってくるのは、セミの鳴き声と、野球部であろう掛け声だけ。


「日直を頑張った尾崎に、ご褒美。」


急に、ピトッと私の頬に冷たい何かを当てられて、 身体がビックリしてしまう。


当てられたのは、冷たい炭酸ジュース。


しかも…


「え?飲みかけ?」


受け取って、よく見ると、キャップは開けてあるし、少し減ってる。


「いらないなら、やらねー。」


ひょいっと持っていたペットボトルを取り上げられて、咄嗟に取り返す。


「 いらないなんて、言ってません。」


取り返される前に、一口飲んだ。


冷たい炭酸が、心地良い。


身体が水分を欲していたのか、もう一口…


そんな私を見て、フッと笑う先生。


なんだか、先生には見透かされてるような気がした。

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