捕まえたの、俺だから。
「……って、みんなのところに戻らないと。完全に忘れてたよ」
「いやだ」
「駄々こねないの。みんな待ってるんだから行かないと」
「だって行っちゃったら、まどか先輩はもういなくなっちゃうんでしょ?そんな二度と来ないみたいな言い方されたら、もうここから動けないよ」
いつもは鈍いのに、今回だけ気づいたのは野性の勘みたいなものだろうか。
縋るような声。離してくれそうもない力強い手。
こちらを見下ろす瞳には悲しみの色が浮かんでいて、なんだか泣きたくなる。
「逃がさない」
極めつけの手錠とともに、ふっと色濃くなる影。
私へと落ちてくるのは直くんの形だけじゃなくて、重みもだ。
さらりと髪が重力に従い、私の首筋を柔らかくくすぐる。
走った後のはずなのに汗のにおいどころか整髪剤のいい香りが放たれているのは、まだ空気が冷たいからってだけではないと思う。
「先輩は他のやつと付き合いたいって思ってんのかもしれないけど」
「え?」
「あいつらが騒いでたとき、拒否とかしなかったし……メッセージもびっしりだったらしいからそうなのかなって思って。でも、それがずっともやもやして、他のやつにムカついて」
いろいろ勘違いして的外れな考えに行きついてるのを否定したいけど、待って。
もやもやとかムカつくとか。
つまりは嫉妬で……そんなの、なんか。
……私のこと、好きって言ってるみたい。