咲き誇れ、麗しい華。
だが次の瞬間、声のトーンが落ち、自転車のハンドルを握る手に力がこもった。



「盛り上がってる時はそんなに聞こえないけど、黙々と本読んでる時とかは、結構ハッキリ聞こえてくるんだよな。今年の体育祭はどんなプログラムにしましょうか、借り物競走のお題は何にしましょうかとか」

「……先輩も、同じこと言ってた」

「マジか。麗華も何か聞いた?」

「うん。生徒会選挙がうんぬんかんぬんって」



今日は昼休み以外、ずっと静かだったから。

そう答えると、兄は切なげな目をして……。


「俺は、先生も大変なんだな、困らせないように真面目に授業受けようって思ったんだけど……先生が忙しいのは自分のせいなんじゃないかって、責めてしまったみたいでさ。だんだん会えなくなっていって」

「だから、気になるって言ったの……?」

「うん。熱出ても単語帳めくるくらい、あいつもストイックだったから。まぁ、毎日会えてるなら余計なお世話だったかな」



信号を待っている間、先輩との会話を思い出す。


昔はたくさんの仲間で賑やかだった小部屋。

だが今は……私と侑希先輩の2人だけ。
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