政略結婚ですが、不動産王に底なしの愛で甘やかされています
「もうすでに耳にしているかもしれないが、あの日は取引先との商談があってあの場にいたんだ」

「えっ?」

 聞いていた話と違って思わず声が出る。

「聞いていなかったか?」

「私と千石さんが商談すると知っていて、盗み聞きするためにあの場を訪れたんじゃないの?」

「違うよ。信じられないのなら、先方から恵茉に話をしてもらってもいい」

 大切な仕事相手に迷惑をかけられるわけがないと、首を大きく左右に振る。

「やっぱりあることないこと吹き込んでいたか」

 涼成さんは綺麗な顔を歪めながら私の手を握り直した。

 じゃあ偶然居合わせたのは嘘ではないんだ……。

 うれしくなって緩んだ口元を空いている手で隠す。

「ただ盗み聞きというのは当たっている。すまない」

「いいよ、それは」

 手をどけて、怒っていないという表情を見せると、涼成さんはほっとした様子で息をつく。
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