政略結婚ですが、不動産王に底なしの愛で甘やかされています
「そのあとは恵茉がその目で見た通りだ。あの状況なら誰だって君を助けたはず。食事に誘ったのは……仕事の話をしたかったというのは事実だ」

 気まずそうにしている姿が、こんな状況にもかかわらず可愛らしくてクスクス笑ってしまう。それもこれも私たちの出会いが計画的ではなかったと知れたうれしさからくる余裕だろう。

 少し乾いた髪に手を伸ばして丁寧に撫でた。

「大型犬がトレーナーに叱られた時の表情に似てる」

 涼成さんはおとなしく私に頭を差し出したまま口を閉ざしている。

「助けてくれたから、私の身にはなにも起こらなかった。そして動機がなんであれ、食事に誘ってくれたから涼成さんを好きになったんだよ」

 涼成さんは私の手を掴んで自身の唇に持っていく。チュッと音を立ててキスをする姿が色っぽくて鼓動が速くなった。

「俺もそうだ。話をして恵茉に惹かれ、気づいたら結婚を申し出ていた」

 ぐちゃぐちゃに絡まり合っていた糸が、一本一本ほどけていくように心がすっきりする。

 あとは坪井さんとの関係について説明してもらえたら……と切り出されるのを待っているのに、涼成さんは優しい目で私を見つめながら距離を縮めてきた。

「ちょっと待って!」

 キスされそうになって手のひらを胸の前に突き出す。
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