政略結婚ですが、不動産王に底なしの愛で甘やかされています
 ロビーラウンジのひとり掛けソファに座っている久我さんを見つけると、早鐘を打っている心臓がひときわ大きく跳ねた。

 纏っているオーラが違うというか、彼だけが絵画から飛び出したように優雅で美しい。

 テーブルの上にはコーヒーカップがあるけれど、口をつける様子はなく辺りの様子を静かに観察しているようだった。

 彼の視界に入るように回り込んで一歩一歩近づくと、こちらに気づいた久我さんが腰を上げた。足早に近寄って頭を下げる。

「自己紹介が遅れて申し訳ありません。柳沢恵茉と申します。ご配慮いただきありがとうございました」

 顔を上げると、久我さんは目尻を下げて穏やかに微笑んだ。

「似合っていますね」

 一拍遅れて、ワンピースについて触れているのだとわかり慌てる。

「ありがとうございます。すみません、これ、プレゼントしていただけるとうかがったんですけど、申し訳ないので買い取らせてください」

「お断りします」

 声も表情も柔らかいのに、反論は受け付けないという威圧感があって口を引き結んだ。
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