政略結婚ですが、不動産王に底なしの愛で甘やかされています
 久我さんにとってはワンピース一着を買うなんてはした金なのかもしれない。しかし私としては、見ず知らずの男性にいただくものとしては額が多すぎる。

 困惑を隠せないでいると、久我さんは腕時計をかざしてなにかを考える素振りを見せた。

「このあとのご予定は?」

 脈絡のない質問に戸惑いつつ答える。

「とくにありません」

「それなら食事に付き合っていただけませんか。少し早いですが」

 部屋を出たのが十七時を回ったところだった。早いと言えば早いが、ラウンジカフェではコーヒーしか飲んでいないし、昼からなにも食べていないのでお腹は空いている。

 そんなに気になるのなら、ワンピースの支払いの代わりに食事をご馳走すればいいって意味かな。

 でも不動産王の彼は女性に財布を出させない気がする。となると、飲み物に入れられたものについて詳しく話をしようとしているのかも。

 返事ができずにいる私の顔を見て、久我さんはおかしそうにクッと喉を鳴らした。

「嫌なら断ってくれていいんだよ。俺はただ、気分転換に食事でもどうかなって思っただけだから」

 表情を緩めて口調をがらりと変えてきた彼の態度に心臓がドキッとする。

 紳士的な態度とのギャップがすごい。
< 15 / 137 >

この作品をシェア

pagetop