政略結婚ですが、不動産王に底なしの愛で甘やかされています
 表情を引き締めた感情の読めない顔から目を逸らし、テーブルに並んだ料理を見つめながら続ける。

「これまでうちに打診をしてきた不動産会社の方々は、私たちが先祖代々の土地を守っていると思われているようですが、私にとって父親の形見のようなものである土地を手放したくないだけなんです」

 口を閉じたあと久我さんからなにか返ってくるわけでもなく沈黙が流れた。

 知識も経済力もないくせに甘ったれたことを言っていると思われただろう。それでも、恥を忍んででも助言がほしかった。

 そう考える時点で、私が動物保護施設を建設するなんて夢のまた夢なのだ。わかっている。わかっているけれど、あと五年、十年あれば実現できるかもしれない。でも私のわがままを通したらいつかお母さんと景雪さんの生活が厳しくなる。

 一日の間に何度も繰り返し考えてばかり。だから気持ちを整理するため千石さんに会ったのに。

 出鼻をくじかれて、また夢を叶えたいというわがままな想いが膨らむ。
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