憎んでも恋しくて……あなたと二度目の恋に落ちました


大学卒業と同時に、由美は東京に帰った。
あの家の辺りはマンション用地になる予定だったから、すべて売却してしまった。
直哉との思い出が辛すぎて、由美はあそこを残しておくことができなかったのだ。

「あそこは、母の実家でしたから……」

「あの頃はお互い家の事情なんて話さなかったから、どこをどう探せばいいかわからなかった。それに探しても君を見つけられなかったのはショックだった」

「私を……探したの?」
「ああ、ずいぶん探したよ。まさか、東京にいるとは思わなかった」

立花家の養女になったわけを今さら直哉に話すのはためらわれた。
五年前も今も、自分が愛人の娘だと話すのは辛かった。

「私は……金沢で生まれて育ったの。母が亡くなったので、中学生の時に父に引き取られて……」
「大学は、また金沢に?」

コクリと由美は頷いた。
直哉と出会えたのは、金沢の大学に進学したからだ。

「それ以外は、祖父母の家にいるの。今もね」
「優しくて、いいお祖母さんだね」
「ええ……私にとって、立花診療所はなによりも大切な場所なのよ」

ふたりは並んで手すり沿いに立ち、海を眺めた。
穏やかに寄せる波は、日本海の荒々しさとは正反対だ。

「由美、僕たちやり直せないか?」

潮風に吹かれながら海をじっと見つめていたら、直哉が急に由美の手に自分の手を重ねてきた。

「直哉さん」

振り払おうと思ったが、力が入らない。

「君とはもう一生会えないと思っていた。でも、また会えたんだ」



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