憎んでも恋しくて……あなたと二度目の恋に落ちました


「私は、もうなにも失いたくないの」

色々な思いが混ざり合っているのか、由美は自分に言いきかせているようだ。

「失った……子どものことか?」

直哉の言葉を聞いて、由美が目を大きく見開いた。

「どうして?」

狼狽える由美を、直哉は痛ましい思いで見つめた。

「この前、たまたま君と理香さんの話しをきいてしまったんだ」
「え⁉」

「僕の子だろう……」

みるみる由美の顔色が悪くなっていくが、直哉にはどうすることもできない。
手を差し伸べようとしたが、由美はその手を避けた。

「あ……」

みるみる涙が盛り上がってきて、由美の切れ長の瞳から溢れてくる。

「私……」
「すまなかった。君ひとりに背負わせてしまって」

流れる涙を拭おうともせず、由美は直哉を見ている。
言葉を失くしたように、泣きながらじっと立ちつくしていた。

「君を守れなかった……すまない」

由美に謝ることしか、今の直哉にはできなかった。





< 88 / 116 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop