観念して、俺のものになって


全然読めていない文庫本を開き、しおりを挟んだ箇所に視線を落とそうとしたその時―――

扉の開く音とともに、複数人の足音と話し声が聞こえ始めた。


ふと顔を上げると、小さな子供を連れた主婦が5人ほどテーブル席に座ったのが見える。


子供が幼稚園の服を着ているから、迎えに行った帰りにママ友同士でカフェでも寄っていこうって感じかな。

ガゼッタはファミレスほど種類は多くないけど、ケーキとかパフェもあるからね。


季節限定のモンブランと、和栗のパフェがめちゃくちゃ売れてるって言ってたなぁ。



その後すぐに、デート中のカップルやいつも窓際の席で資料を作成する常連のサラリーマン、さらに大学生の女の子たちが次々来店した。

ぽつぽつと空いていた店内の席は一瞬にして埋まり、スタッフさんたちは慌ただしく動きはじめる。


ええ、こんなに一気にお客さんが来るなんて大変そう。


店内にはお客さん達の話し声とエスプレッソマシンの大きなスチーム音が響き渡り、スタッフさんの「いらっしゃいませ!」と言う声からもだんだん余裕が失われていく。


テイクアウトの注文も対応しなきゃだし、かなり忙しそうだ。

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