観念して、俺のものになって
女性は悔しそうに唇を噛み、店長の後ろに庇われたままの私を睨みつけた。
椅子にかけていた派手で高そうなジャケットを荒々しく纏い、バッグを肩に掛け顔を歪めると、ツカツカとヒールを鳴らしてすれ違いざまに私の近くで悪態をつく。
「……アンタ、覚えてなさいよね!!」
え、ええ!?そう言われましても、咄嗟に話を合わせただけで私はただの客なのですが。
とは言えず、嵐のように去っていく後ろ姿を静かに見守った。
***
はぁ.....一時はどうなることかと思った。
女性がいなくなった店内は再び平穏を取り戻し、お客さん達はホッと胸を撫で下ろすと先ほど見た光景について感想を互いの連れに喋っている。
あの人の対応に店長も緊張していたのかもしれない。
ふう、と大きくため息をついて眉を下げると、この場にいるお客さん全員に向かって深々と頭を下げた。
「皆様、お騒がせして大変申し訳ございませんでした」
もちろん店長を咎めるような人は誰もいない。
「ツムギさん、大丈夫でしたか?」
「ああいう厄介な客、たまにいるんですね」
皆が口々に声を掛けるのに対して、穏やかな笑みを浮かべていた。
あ、よかった。
いつもの優しい笑顔に戻ってる。
さっきの店長は見たことないくらい怖かったもん。