観念して、俺のものになって


私が偶然見つけていなければ、紬さんはそのまま飛び降りていたんだよね……なんというか、幸運の巡り合わせだなぁ。


「まひるちゃんはあの時、俺にこう言ったね。


『いくら家族でも、あなたの人生を操っていいはずがない。一度きりの人生、どう生きるか決めるのは自分自身だ。

操られたまま死んでしまっていいんですか』と。」


あー……5年前だから記憶が曖昧だけど、言ったような気がする。


「目を真っ赤に腫らして、涙でぐちゃぐちゃに歪んで顔で引き留めてくるきみを見て

『この子は見ず知らずの他人のために、泣いてくれるんだ』って思ったら不思議と死ぬ気がなくなっていったよ」


“ありがとう”と一言言って、優しく朗らかな顔で見つめる紬さんに私もゆっくりと頷き見つめ返した。

私の言葉で紬さんの命が救われたなら、本望だよ。


「どうにかしてこの状況から抜け出したい、でもどうすれば……って悩んでた時に、両親が唯一頭の上がらない、母方の祖父母が隣県に住んでいることを思い出してさ。


祖父とは何年も会っていないけど、これしかない!と思い立って、夜に親が寝てる隙を狙って家を飛び出し、電車で祖父母の家まで助けを求めに行ったんだ」


思い切った行動に出たな、と私が感心している間にも紬さんの話は続いていく。


「向こうに着いたのは日付が変わってからだったな。深夜にいきなり来たから、怒られるなと身構えてたら、とりあえず中で事情を話しなさいと入れてくれたのが有難かった。


それで、一通り全部話し終えたら厳格なイメージが強かった祖父が漢泣きしてたんだよ。
そばに居る祖母も大号泣。

予想外の反応で、思わずきょとんとしちゃってたら力強く抱きしめられて、

気づいてやれなくてすまなかった。
今まで1人でよく我慢したな。
俺が彼奴らに喝を入れてやる、もう大丈夫だ!って言ってくれた瞬間。

ああ、やっと俺は自由になれるんだと泣きそうになったよね」


< 156 / 200 >

この作品をシェア

pagetop