観念して、俺のものになって


紬さんからは何も聞いていないけど、彼は結婚した後このおじいさんと同居する予定なの?

どう返事をしたらいいのか考えていると、おじいさんはハッとしたようにドレッサーの方を見つめた。

彼の驚いた様子に、何かびっくりするようなものがあったかなとそちらに目を向ける。

「あれは……”仁科”の?」


目を丸くしたおじいさんに尋ねられて、そう言えばさっき小説を読もうと取り出したことを思い出す。

「あ、はい」


短く返事すると、おじいさんの目の色が変わった。


「きみはどの作品が好きなんだい?」

「えっ?」


「仁科の作品だよ!俺のお勧めはもちろん『可惜夜の月』だが、『常闇の街』も捨てがたい!」

その熱い言葉に、同志の気配を感じて思わず頬を緩める。


おじいさん、まさかの仁科先生のファン!?


それにテンションが上がった私は先ほどとは逆に、おじいさんの掌をきゅっと握りしめた。

「いいですよねー、『常闇』!
私も大好きです!」

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