観念して、俺のものになって
おじいさんの印象は先ほどと全く違う。
なんとなく嫌な予感がひしひしとし始め、握りしめていたおじいさんの手をそろっと離したけど、私の掌は再びおじいさんに掴まれた。
「ひえっ!!」
おじいさんは先ほどの穏やかな微笑みが思い出せないくらい、悪い顔で笑いながら私の両掌を握りしめる。
「なぁ、紬。まひるさんは本当にいいお嬢さんだ……よくぞこんないい嫁を見つけてきてくれた。
一目ひとめ見ただけで俺には分かるぞ!彼女は仁科と同じ目を持っていると!この娘がいればあれの原稿はもっと見つかると思わないか?」
熱に浮かされたようなおじいさんの言葉に、紬さんは心底嫌そうに顔を歪めた。
「……これだから爺さんとまひるちゃんを会わせたくなかったんだ!!
さっさと親族控室に帰ってジジイらしく座っててくれないかな!」
彼は力づくでおじいさんを私からひっぺがし、バスケットボールの選手のように両腕を広げておじいさんを扉の方へと追い立てていく。
紬さんの高い背に遮られたその先で、おじいさんは大声でがなり立てた。
「おいおい坊主!偉くなったもんだな、ええ!?……いつからこの俺にそんなクチを訊けるようになった?まだ借りは返しきってねえだろうが!!」
「爺さん、ヤキが回ったんじゃない?店の開業資金として借りた金は利子までつけて、とうの昔に返し終わっただろう!?認知に問題があるならいい老人ホームを探してあげようか!!」