観念して、俺のものになって
少し驚いて顔をあげると、そこにいたのはもちろん店長さん。
仕事を終えた店長はここのスタッフとわかるエプロンを付けておらず、きちんと止められていたシャツのボタンは上から2つほど開いている。
ネイビーの色あせたジーンズに、足元はピカピカに磨かれた革靴。
もう、私服までカッコいいとか何事?
ジーンズを着こなしていて、よく似合ってると思う。
「ねぇ、見て見て!てんちょーの私服久々にみた!!」
「やば、モデルみたい!」
店長に気がついたんだろう、私の斜め向かいに座っている女子高生2人がきゃあきゃあ騒ぎ始めた。
そして、こっそりと向けられるスマートフォンに目を見開く。
えっ、あれって普通に盗撮なんじゃ.....?
店長は唖然としたままの私を見てから、店の外を指差した。
「悪いけど、早く出よう。あんまりじろじろ見られ本当は好きじゃないんだ」
撮られていること、教えた方がいいかも。
できるだけ声を小さくして、さりげなく伝えてみる。
「あ、あの.....撮られてますよ」
「ああ、知ってる。何回か同じことがあって、SNSには載せない、観賞用だって言ってたからそれならいいかって見逃してあげてるよ」
「そうなんですか、大変ですね」
いくら悪用しないとは言え、許容している店長がすごい。
月並みな感想しか言えないけど、イケメン過ぎても面倒なお客さんに絡まれたり、撮られたりして結構苦労しているんだね。
周りの客に聞こえないような音量で私に話しかけた彼は、客たちには穏やかに笑いかけながら私の飲み終えた空のカップをカウンターの店員に手渡し、そのまま店のドアの方へと消える。