観念して、俺のものになって
私は机の上に出しっぱなしにしていた文庫本を慌てて鞄に入れて、立ち上がった。
でも、周りのお客さんたちのようにイケメン店長が近くで見れて嬉しいとか、声をかけられてラッキーって言う浮かれた気持ちは1ミリもない。
……むしろ、せっかくの休日の予定を彼に狂わされて損した気分だよ。
元はあの派手な女性が悪いんだけど、私と入籍するだなんてウソついたら余計に付きまとわれるに決まってるでしょ。
こんなことをされても『イケメンと話せてツイてる!きゃっ♡』と思う人がいるならぜひお目にかかりたい。
それにあの人、大目に見てあげるとは言え、私にとばっちりを受けさせたんだからもう少し申し訳なさそうにしてもいいと思うんだけど。
顔がいいからってなんでも許されると思ったら、大間違いなんだから!!
心の中で不満を感じながらも足を動かし店の外に出ると、彼の姿はどこにも無かった。
「え?まさかもう帰った!?」
思わず声をあげて、周りをキョロキョロ見渡す。
う、嘘でしょ!?送っていくって言ったから1時間待ったのは何だったの。
「ちょっと……!あまりにも無責任じゃない!!」