観念して、俺のものになって
拳を握りながら怒りを爆発させると、後ろから腕を引っ張られる。
驚いて振り返れば、私の腕を引いたのはさっきまでいなかった店長だった。
どうやら店の扉の影に身を隠していたらしい。
店長は眉間に皺を寄せたまま、私を見下ろす。
「先に帰ったとでも思ったのかい?送ると言ったんだから、約束は守るよ」
心から心外だと言うような目で見られ、「あ……私の早とちりだったかな」とちょっと反省した。ほんのちょっとだけね!
それなら良いんです。
「怒ったら平凡な顔が不細工になるから、やめた方がいいぞ。とりあえず、今は長話している暇はないんだ、振り返らずに駅まで歩くよ」
「は、はぁ?不細工!?」
そこは“可愛い顔が台無しになるよ”って言うべきじゃない!?
嘘でも、私の機嫌を取るつもりはさらさらないようだ。
店長は私の手に、自分の長い指を絡めてぎゅっと繋ぎだした。
ゴツゴツした男性の掌の感触に、ほとんど免疫がない私は「ひえっ!?」と情けない声をあげる。
店長は私と手を繋いだまま洗って歩きだした。
彼の脚は私より遥かに長く、リーチが違うから小走りで一生懸命彼についていく。
店長は駅に向かって早足で歩きながら、ちらちらと通り過ぎていく店のショーウインドウに視線を向けていた。
何を気にしてるんだろうか。
ガラスに映る俺ってカッコいいな、とか自分に酔ってる?