観念して、俺のものになって
「ほら、さっさと書いちゃって。早くしないと窓口に呼ばれちゃうよ?」
店長がボールペンを手渡してきのを受け取って、少し悩む。
……これ、私も書かなくちゃダメ?
そっと視線を上げると、彼は腕を組んだまま番号札とすでに呼び出された番号が表示された電光掲示板を見比べ難しい顔をしていた。
既に番号札を取ってしまっているし、店長の言い様だとこのまま呼び出されたら職員の人が忙しそうに働いている、目の前の窓口に行くつもりなんだろうと思う。
休日は開いていないのだから当たり前だけれど、平日の区役所を利用する人は多い。
あの女性は……本当にここまで追ってきているのかな。
ごくんと唾を飲んであちこち見回してみたものの、女性の姿は見当たらなかった。
でも、引っ切り無しに人が出入りしてる上に、死角も沢山あるこの場所で、たった1人を探そうという方が無理なことかもしれない。
まだどこかに隠れている可能性もある。
.....その時だった。
『ポーン』と音が鳴り、電光掲示板に表示された番号が切り替わった。
店長の持っている番号を盗み見ると、呼び出されたのは私たちの1つ前の番号だということに気づく。
私は慌てて、すでに彼が書き込んだものを見ながら自分の名前や住所を書き入れはじめた。
次に呼び出されたら、これを本気で出すつもり?
私は用紙に記入を続けながら、彼に小声で尋ねた。
「あの……これ、本当に出したりはしないですよね?」
僅かに顔を上げると、店長は私を見下ろし少し両眉を上げた後、嫌味ったらしく鼻で笑った。
「驚いたな……きみ、それ本気で言ってる?よく見てみなよ、僕たちの内容だけじゃ婚姻届は出せないから」