観念して、俺のものになって
店長は私の目の前にある婚姻届をさっと取り上げて、記載漏れがないかチェックし始める。
……これは提出するフリだけの書類なんだから、そんな必要ないのに。
疑問に思っていると、店長は考えるように指で自分の唇をなぞり、ふっと微笑んだ。
「ふぅん……きみ、まひるちゃんって言うんだ」
「ちょ、返してください⋯⋯!!」
咄嗟に手を伸ばして取り返そうとするけど、私より頭2つ分背の高い彼は紙を自分の頭の上へと持ち上げてしまう。
「へえ、本籍はこの区なのに……住所は同じ区内のアパート?1人暮らしなの?」
「もうっ!勝手に見ないで!」
まるで小学生のようなその行為に腹を立てつつ、婚姻届を取り返そうとジャンプする。
でも、ここへ来るまでに消耗していた私の足は、思った以上に疲労が蓄積していた。
「·····わあっ!?」
ジャンプして着地した時に、バランスを崩してしまう。
なにか体を支えられそうなものを掴もうとしてとっさに両手を前に出したけど、時すでに遅し。
ぎゅっと目を瞑ったその時ーーー
グイッ
私の腰を支えてくれたのは店長だ。
「大丈夫か?怪我はしていない?」
お店にいる間ぼーっと見つめていた、しなやかな筋肉に覆われたカラダが目の前に迫って、ドキッとした。
前から密かに思ってたんだけど、
ほんといい体してるなぁ。
顔が赤いのを悟られなくて、顔を背ける。
「べ、別に助けてなんて言ってないじゃない。
元はと言えばあなたが子供みたいなことするから……!」
転倒しかけたところを助けてくれたのに、混乱しきった私の口から飛び出たのは、可愛げのない言葉だった。
なんで私、ありがとうの一言も言えないのよ!!
自分が放った子供じみた言葉に、途方に暮れるしかない。