観念して、俺のものになって
「あのね、今から話すことは絶対内緒にして欲しいの」
「はい」
私はキョロキョロと店内を見渡して、周りに人がいないのを確認してから矢野ちゃんにこっそりと耳打ちをした。
「実は⋯⋯私、過去に飛び降り自殺しようとした人を間一髪で止めたことがあってね」
「えっ!それ本当ですか⋯⋯!?」
矢野ちゃんは口元に手を当てて、
心底驚いている様子。
うん、いきなりこんな事を話したから当然の反応だろう。
この話は家族や信頼できる友達とか、
ごく一部の人にしか伝えてない。
作り話じゃなくて、本当にあった出来事なんだよ。
***
あれは⋯⋯そうそう、5年前の大学生の時だったな。
その頃から読書が趣味で、当時は一眼レフで写真を撮ることもハマっていたの。
それで、ショッピングモールの屋上にある展望台デッキで、よく景色を観ながら時間を過ごしていたんだけど……
ある日、いつものように屋上へ行ったら
偶然塀の向こう側に立つ人を見つけたんだ。
眼鏡を掛けた黒髪の男性。
ちょうど今から、飛び降りようとしてるのがはっきり分かった。
『なっ……!!?』
とにかく止めないと、という思いで猛スピードで走ったよ。
『何やってるんですかっ!?』