観念して、俺のものになって
「いや、仕事じゃなくて……桐谷がそこまでその店を気に入ってるなら、一緒に行けたらなと……」
「えっ、一緒に?」
おお、市東さんもコーヒー好きだったのね。
勝手に飲まなさそうなイメージを抱いていたから、意外!
私はあの店で本を読むつもりだから、
まったく喋らないけど大丈夫だろうか。
驚いて聞き返すと、市東さんは顔を赤くして首を振った。
「あっ、いや、その……嫌ならいいんだ!」
「全然嫌では無いですよ?」
私がぽかんとしたその時、市東さんのデスクの方で固定電話が鳴りはじめた。
3コール続いた電話が転送され、
田口さんの胸ポケットの業務用電話が鳴る。
「あっ……すまん、この話はまた!」
FAXを持った軽く手を振った後、市東さんは「はい、株式会社mizumo、市東でございます……」と電話に出てそのままデスクの方へと歩いて行った。
結局何を言おうとしたのか、聞きそびれたな。
取り残された私は手元に残ったFAXを握りしめたまま、首を傾げる。