観念して、俺のものになって
「いらっしゃい!待ってたよ、まひるちゃん」
「ど、どうも……」
うっ……紬さん狙いの女性客たちの、訝しげな視線をひしひしと感じる。
『店長に名前で呼ばれている、あの女は一体誰?』とでも言いたげなのが分かるよ!
癒されに来たはずなのに、居心地が悪い。
「注文はブルーマウンテンでいいかな?」
もしかしたら紬さんは休憩していたのかもしれない。彼の体からわずかに煙草の匂いがしたから。
球形の邪魔をしてしまったかな。
職場で嗅ぎ慣れた匂いに気付いて紬さんを見上げると、口元を掌で隠して困ったように顔を背けた。
「えっと、じゃあそれでお願いします」
紬さんの方から頼みたいものを聞いてくれたんだから……別にいいよね?
先ほどはバイトの女の子に『よく思われたい』という気持ちから言えなかった言葉が、自然と口からこぼれ出る。
紬さんは安心したように眉を下げ、嬉しそうに目を細めた。
予想していなかった表情に、どうしてか胸が騒いで私はとっさに言葉を重ねる。
「あ、私煙草の匂い嫌いじゃないですよ」