観念して、俺のものになって


「……ふふっ」

すると、すぐ側から吐息まじりの控えめな笑い声が聞こえてくる。


はっ、あまりにも美味しいからこの人の存在を忘れかけてた!


紬さんはと言うと私と視線を合わせるように腰を落とし、微笑んでいた。


「まひるちゃんは本当に美味しそうに珈琲を飲むよね。その表情を見てたら、俺も淹れた甲斐があるよ」

「ええっ、そうですか?」


「うん、それに本を読んでいる時も百面相してて面白い」

「うそ!?」


やだ、そこまで見られてたのは恥ずかしい。

ぎょっとして彼を見つめると、紬さんはニヤッと人の悪い笑顔を浮かべる。


「嘘だよ」

「ちょっと、なんですかもうっ!」


「まひるちゃんって揶揄い甲斐がある、って言われたことない?」

「ありません!!」

「ふうん、そう?」


「コーヒーありがとうございます。じゃあ私、小説と珈琲に集中したいので」


遠回しに『どっか行って』と目で訴えかけながら、カップを静かに置いた。

彼は私のつれない対応に眉を上げて肩を竦める。

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