観念して、俺のものになって
「仁科 隆聖、いいよね。俺は『常闇の街』とか好きだよ」
紬さんが立ち上がりながら口にした言葉に、反射的に顔をあげた。
「つむぎさ……店長は仁科先生の本、お好きなんですか!?しかも『常闇の街』!?」
「うん。序盤の主人公の言葉が伏線だったとは思わなかったな。
あと、ラストのどんでん返しが何度読んでも面白いと思う」
分かる、すごく分かります!
私の周りには小説を読む人がいなくて(大抵が漫画)、読了後の感想を語り合える相手が欲しいなぁって思ってたんだけど……割と身近にいたのがなんだか嬉しい!
分かりやすくニッコニコで、紬さんに話しかける。
いや、我ながら掌返しがすごいな。
「そうなんですよ!先生の本は本当に凄いんです!あの、あれは読みました?『可惜夜の月』!」
「ああ、読んだよ。あれもすごくよかったね」
「うわぁ、本当ですか!?私あれを初めて読んだ時にめちゃくちゃ泣いちゃって……!それから先生の未発表作が書籍化されたときは全部買うことにしてるんです!」
いけない、ここは物静かなカフェなのに興奮して声が大きくなっちゃう。
「君は仁科隆聖の大ファンなんだね。
それはそうと、今日はこれから予定ある?」
「ないです!……へっ?」