観念して、俺のものになって
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「それで、夕食ってどこに行くんですか?」
ゆっくりと珈琲を楽しんだ後、しばらくしてやってきた紬さんと手を繋いで歩きはじめた。
頭二つ分背の高い彼を見上げながら尋ねる。
……ナチュラルに手を繋いじゃってるよ。
特に振りほどいたりはしないけど、今は店の外だから私たちが婚約したって設定を貫かなくても良いんじゃないかな?
紬さんはこちらを見下ろし、繋いだ手と逆の人差し指を唇に当てて柔らかく微笑んだ。
「んー、着いてからのお楽しみってことで」
その仕草だけでもカッコいいんだから、イケメンって得だよね。
陽は完全に落ちて、昼は薄暗いビル街は表情を一変させていた。
一定の間隔に立てられた街灯からはオレンジ色の光が降り注ぎ、そろそろ終業する店の看板はすでに明かりを落としている。
そして、代わりに居酒屋やバーなどの店の看板が街のあちこちで輝きだす。
夜の街は高い所から見たら綺麗だから、何となく好きかも。
そんな温かい色の光に照らされた、紬さんの今日の格好はオックスフォードシャツの上からネイビーのシャツチェスターコートを羽織り、
下は同じ色味のテーパードパンツと黒い革靴だった。