観念して、俺のものになって
恐る恐るそう尋ねると、彼は小さく「ああ」と答えた。
「この店はコース料理も良いけど特に蒲焼が美味いんだ。さぁ、個室を予約してあるから入ろう」
うっ、予約してるなら「別のお店にしませんか?」って言えないじゃない!
こんな高級店に入ったことのない私は、思わず躊躇して足を止めそうになる。
家族で一度だけ、回らない寿司屋さんに行ったことがあるんだけどその時は確か1万円前後はしたと思う。ここはきっと、1万は軽く超えると予想して震えた。
胃が痛くなってきた……
紬さんはドキドキしている私の手を一切離すことなく、暖簾をくぐり、からりと格子戸を開ける。
「いらっしゃいませ」
店に入るのと同時に、落ち着いた柔らかい声が聞こえてくる。
声のする方向へと視線を向けたら、中居さんの格好をした女性が私たちに向かって丁寧に頭を下げていた。
紬さんは女性に向かってにこやかに笑いかける。