観念して、俺のものになって
するとその時、ちょうどお盆を持った先ほどの仲居さんが入ってきて「失礼いたします、お茶をお持ちしました」と声をかけてきた。
崩壊しそうな顔をぐぐっと引き締めた私は、静かにお茶を出した仲居さんに小さく頭を下げる。
仲居さんは私に、にこりと笑いかけ「もしよろしければ、1階には仁科先生の書もありますので、お帰りの際にでもご覧になってください」と教えてくれた。
もちろん、喜んで拝見させていただきます!!
優しい言葉に涙腺がぶわぁっと決壊しそうになって、首を大きく縦に振る。
紬さんはそんな私を見て困ったように眉を下げ、口元を隠して笑った。
「まひるちゃんが喜ぶだろうなと思って連れてきたけど、ここまで大喜びとはね」
紬さん……私のために連れてきてくれたのかぁ、嬉しい。
なんだ。性悪な人だとばかり思っていたけど、案外いい人じゃない!
食事の前に、大好きな仁科先生についての情報を得た私はひたすら作品についての考察や感想を紬さんにぶちまける。
紬さんはそれに嫌な顔一つせず、相槌をうち、時々意見を述べがら会話を続けてくれた。
そうこうしている間に、うな重が運ばれてくる。
お盆から下ろされる丼から漂う香ばしいタレの匂いに、漏れ出した涎をごくんと飲み込んだ。