円満な婚約破棄と一流タンクを目指す伯爵令嬢の物語
 華々しいパーティーが開催されて高等学院の一年の締めくくりとなるわけだが、参加は自由であるため一部の貴族の子息女のみが参加するこのパーティーにリリーはもともと欠席の予定だった。
 こういう華やかな催し物よりも静かに本を読むことを好むリリーは、社交パーティーにも出たことがない。
 実力のほどは知らないが、一応ダンスはできるらしい。

 高等学院の卒業パーティーには一緒に参加しよう、もちろん俺のエスコートで。
 レイナードたちに、俺たち実は婚約者同士なんだって言って驚かせてやろう。
 そう約束したことをリリーは覚えているだろうか。

 卒業パーティーでもしもリリーが違う男にエスコートされて参加していたら、俺はそいつに掴みかかるかもしれない。
 それを想像しただけで心に黒い雲が渦巻くのだ。

 実際にその状況になってしまったレイナードは、自業自得とはいえ気の毒になるほど必死に嫉妬する気持ちを抑えようとしているように見えた。
 どうやって選んだのかは知らないが、ステーシアが選んだパートナーのルシード・グリマンは美少年だし、ドレスはいつもの首までしっかり覆っているデザインとは違い、目のやり場に困るほど胸元が大胆に開いていた。
 
 ステーシアちゃんて、意外と巨乳……はっ!待て、そんなことを考えていたと知られたらリリーにさらに嫌われる。
 リリーがいなくてよかった。

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