婚約者には愛する人ができたようです。捨てられた私を救ってくれたのはこのメガネでした。
 そしてもちろん、そのような行動に出たエリックに、エメレンスも焦っていた。だから、こうなることを恐れて、彼女には毎年眼鏡を贈っていたというのに。それで今まではうまくいっていたというのに。
 助けを求めるかのように、リューディアはエメレンスを見上げた。エメレンスはごくっと大きく喉を鳴らして唾を飲み込む。

「エリック、悪いが()()()()()()だ」
エメレンスはすっとリューディアの腰を抱き寄せる。それに驚いているのはもちろんリューディアで、彼女の顔は「どういうこと?」という困惑の色で溢れている。

「あ、やっぱり。お二人はお付き合いなさっていたんですか……」
 目の前に現実を突き付けられたエリックは、しゅんと肩を落とす。それでもエメレンスの身体は少し震えていた。彼にリューディアを盗られないように、という思いでの行動だったのだが、彼女に引かれていないだろうか、と。
「では、お邪魔虫はさっさと撤退します」
 エリックは少し寂しそうに、事務所の方へと向かって早足で歩きだした。

< 162 / 228 >

この作品をシェア

pagetop