婚約者には愛する人ができたようです。捨てられた私を救ってくれたのはこのメガネでした。
 リューディアとエメレンスは二人、その場に残される。
 気まずい、というのがエメレンスの気持ち。あの場を誤魔化すために、エリックの前だからこそあんなことを口にしてしまった。さて、リューディアはどう思っているのか。

「あの、レン……」
 思わずエメレンスは身体を大きく震わせてしまった。これから死の宣告でも与えられるのではないか、というほどに。

「あの、なぜエリックは一人で先に行ってしまわれたのでしょうか? それに、お付き合いってどういう意味でしょうか?」
 目をくりくりと大きく広げて、首を傾げているリューディアを表す言葉は、きょとん、だ。間違いなく彼女は、きょとんとしている。エリックに問われて、あれだけ驚いていたにも関わらず、今はきょとんとしている。
「わたくしとレンは、そのお付き合いをしていたのでしょうか……。その……、わたくしが気付かないだけだったのでしょうか……」
 気付いていたら、先ほどのエリックの問いにはっきりと「はい」と答えられたというのに。変に悩まなくて済んだというのに。

「いや、すまない。あれは、エリックを誤魔化すための、その場のでっちあげというか……」

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