婚約者には愛する人ができたようです。捨てられた私を救ってくれたのはこのメガネでした。
 好きか嫌いか。で聞かれたら、恐らくそれは好き。だけど、その言葉を軽々しく口にしてしまってもいいのだろうか。
 と、同時にエメレンスとの関係を失いたくないという思いもあった。彼がこのシャルコに来てから、気が付いたらいつも側にいてくれた。いや、シャルコに来る前からも。悲しんでいるリューディアに寄り添ってくれたのは、いつもエメレンスだった。彼がいてくれたから、モーゼフに冷たい態度をとられても、立ち直ることができた。エメレンスがいてくれたから――。

「わたくしも、エメレンス殿下をお慕いしております……」
 リューディアの口からは自然とその言葉が漏れた。嬉しくて恥ずかしくて、目頭には涙が溢れそうになって溜まっていた。
 だが、モーゼフと婚約を解消してから、半年も経っていない。だからこそ、エメレンスに対してこのような気持ちを抱くのは、ふしだらであるとも思っていた。モーゼフとエメレンス。彼らは父母を同じくする兄弟。顔立ちはよく似ている。
 リューディアは胸が苦しくなった。

「ディア、本当に? ボクの聞き間違いではない?」
 エメレンスは興奮しているのか、声が弾んでいた。

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